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2008年2月24日 - 2008年3月1日

涼宮ハルヒの内藤列伝 (7)

 さて、当たり前のことだが、この世界には当然ながら引力というものがある。どんなに初速が速かろうとも所詮は人間が投げた石つぶて。いずれは引力に逆らうことができなくなり、地面に落ちてくる。ジュノ下層競売前の人混みの中で、上に向かって石を投げた結果はどうなるか?わざわざ考えるまでもない。むしろ考えたくもないね。

 落ちてきた石つぶては、ナイトレリック装束の男の頭に直撃した。頭から血を流して倒れる男。ナイトのレリック頭は頭部が露出していることが災いしたようだ。

「パーティメンバーその4、ゲット~!」

 ここは他人の振りをしておいた方が良さそうだ。…何て思ったのだが、拾ってきたアイテムを飼い主の元に持ってきたヒナチョコボのような得意げな顔をしながら、意気揚々と倒れた男を引きずって俺の元に来るハルヒ。周りからの白い目が痛い。チクチク痛い。しょうがない。男にケアルをかけてやるとしよう。やれやれ。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (6)

=== Area: Lower Jeuno ===

 俺達はジュノ下層にやってきた。ここは競売にほど近い噴水前。
 競売前で取引に興じる人々、行き交う人々、放置バザーの倉庫番たち。今でこそアトルガン白門に人口密度ナンバー1の地位を譲ったが、ジュノ下層競売前も今でもそれなりに人が集まってそれなりに活気がある。時折、テレポ屋シャウトやミッションメンバー募集シャウトが聞かれる。

「それじゃあ、ここでメンバー選びをするわよ!」

 ハルヒもここでシャウトでもするのだろうか?などと思っていると、おもむろに握り拳大の石つぶてを取り出すハルヒ。何故だかとてもとても嫌な予感がする。

「待て涼宮、その石つぶてを一体どうす…」

「とりゃーー!!」

 こいつ、やりやがった。俺の質問が終わる前にハルヒは石つぶてを高い空に向かって投げる。ジャイロ回転しつつ放たれた石つぶては吸い込まれるように青い空めがけて飛んでいく。ああ、こうしてみるとジュノの空も結構青いもんなんだな、とかぼんやりと思った。

…っていうか涼宮、おまえ何やってんだっ!

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (5)

それはいいとして、なんであの子なんだ?

「あんたの知り合いじゃないの?限定酒場で、本を読んでいる振りをしながらずっとあんたの事を見ていたような気がしたんだけど?」

知らねえよ。っていうか、今この場で初めて見るやつだ。

「ふーん、そう。まあいいわ。せっかくだからこのままPTメンバーに加えておきましょう」

いいのか?そんなので?

 ふと、本から顔を上げて俺の顔を見る少女。プルートスタッフの先端に付いている闇の宝珠のような瞳を数秒ほど俺の顔に固定し、ぽつりと言った。

「長門有希」

 そして再び、彼女は活字の世界へと舞い戻っていった。何故か解らないが、こいつはやっぱり眼鏡をしてないほうが映えるなと思った。やっぱり俺には眼鏡属性が無いからなのだろう。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (4)

 限定酒場を出て、俺達は簡単な自己紹介をした。彼女は「涼宮ハルヒ」というらしい。

「とりあえずこれで3人ね。他にメンバーの目星はつけてあるけど、あと一人は欲しいわね」

俺とお前、それと既に一人いるのか。

「何言ってんの?あたしとキョン、それとあの子で3人じゃない」

ハルヒが指す方をみる。見慣れない服に短いスカート、ウィッチハットに黒いマントを身につけた黒魔道士風少女が、橋の手すりに腰掛け何やら分厚い本を読んでいる。あの服は確か、セーラー服とかいう西方の国の海軍の制服だった覚えがある。

「っていうか、涼宮、さっき俺の名前を言ったのに何で"キョン"と呼ぶんだ?」

「あんた、谷口やウェイトレスさんに"キョン"って呼ばれてるじゃない。あたしが呼んで何か不都合があるわけ?」

聞けば、ハルヒもあの限定酒場に常連で、顔見知りの谷口と俺が一緒にいる姿を何度か見かけたことがあるという。それにさっきの俺と朝比奈さんとのやりとりも見ていたことだろう。また俺の間抜けなニックネームが広まるわけか。やれやれ。それと谷口、お前にもこんな知り合いがいたんだな、などというどうでもいいことが頭を過ぎる。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (3)

 その女はナイトAFで身を包み、頭には黄色いカチューシャとリボンを付けている。探し求めていた四つ葉のクローバーを見つけた時のような極上の笑みを浮かべつつ、気の強そうな目は真っ直ぐ俺を見据えている。俺は訊ねる。

「何のPTですか?」

「金稼ぎPTよ。ダボイでオークどもをしばいて身ぐるみを剥がすの。かなり稼げるはずだし、なんならスキル上げも兼ねてもいいわよ。どう?」

 俺は少し迷ったが、午後の予定は特に決まっていなかったので付き合うことにした。アダマンプレートアーマー一式を購入して財布も寂しかったので丁度いい。それにちょっとした探検気分だった。今思えばやめておけばよかったんだ。しかし、美人にPTに誘われ、これを機会にお近づきになっておくのもいいかな、などと一瞬血迷った俺を誰が責められよう。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (2)

=== Area: Upper Jeuno ===
< Welcome to S.O.S >

 その日、俺は一人ジュノ上層の限定酒場で昼食を食べいてた。

 毎日ジョブや種族やらの限定日を設け、そこで同じ仲間同士で語り合うという一見有意義そうなコンセプトなはずのこの酒場。少し前までは客がほとんど入らずに、たまに来るのは時計台の署名を集めてる奴か指定生産納品アイテムを買いに来る調理人くらいだった。

 だがしかし、ここ数日は混雑している。その原因はこの人、朝比奈みくるさんがバイトでウェイトレスをするようになったからだ。その愛らしいルックスと夢がたくさん詰まっていそうな大きな胸、そして一生懸命仕事に取り組む小柄なウェイトレスさんの姿は、殺伐とした世界を生きる世の冒険者男性(と一部の女性)諸君に潤いを与え、ジュノ上層の寂れた酒場に光臨された天使の噂は瞬く間に広まった。

 こうして、たとえレベル1のジョブでも、わざわざジョブチェンジして入店するやつなんかが増えて、もはや「限定」なんてそっちのけで店はただいま絶賛繁盛中。
 そして今日はナイト限定の日。俺はメインナイトなので、先日購入したアダマンプレートアーマー一式を身につけつつ入店しているというわけだ。

 声をかけられたりナンパされたりしながらも、パタパタとお仕事をする朝比奈さんを眺めながらの食事。世の中良い時代になったものだ。なんて思いつつサンドイッチを頬張っていると、朝比奈さんがこちらにやってきた。

「キョン君、お茶のおかわりはいかがですか?」

 柔らかいエンジェルスマイルで俺に問いかける朝比奈さん。光栄です。ありがたくいただきましょう。それにしても、名前を覚えていただけたのは光栄だが、マヌケなニックネームの方を覚えられてしまって少々複雑な気分だ。この店にはよく谷口や国木田も来ていて、一緒に飯食ったりしているからな。その時に『キョン』と呼ばれているので、きっとそれで覚えたのだろう。

 そんなこんなをしながら朝比奈印のお茶を飲みつつ、二つ目のサンドイッチを口に入れようとした時、背後から女が話しかけてきた。

「あんた、ナカナカ腕が立ちそうね。よかったらPT組まない?」

振り返る俺。エライ美人がそこにいた。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (1)

 ヴァナ=ディールの冒険者が勇者や英雄になりえるか?など、レベル上げPTの合間の休憩の話題にもならないくらいのどうでもいい話だが、それでも、俺達冒険者が勇者や英雄的存在になりえるのか?というと、俺は確信を持って言えるが、最初からそんなのになれると思ってなどいなかった。20年前に起きたというクリスタル大戦の時は、戦時下という特殊な状況であったと理解しているし、ましてや今は独りよがりや自己厨を「勇者様」などと揶揄して呼ぶ風潮ですらあるのだが、はてさて、リディルやクラクラや白虎佩楯やダルマティカやスピードベルト、レリック装束一式やレリック武器最終段階など、HNM的廃人的オフラインRPG最終装備的アイテムは誰にでも簡単に取れるわけではない、ということに気付いたのは相当後になってからだった。いや、それ相応の努力と対価を払えば取れるものなのかもしれない。ただそんな現実に気付きたくなかっただけなのだ。俺は心の底からリディルやクラクラやその他以下略が目の前にフラリと出てきてくれることを望んでいたのだ。
 しかし、現実というのは意外と厳しい。ヴァナ=ディールのアイテム供給バランスが良くできていることに感心しつつ、いつしか俺は廃人装備や高額アイテムの話をそう熱心にしなくなっていた。リディル?白虎佩楯?マートキャップ?そんなの取れるわけねぇ。でも、ちょっとは欲しい、みたいな最大公約数的な事を考えるくらいにまで俺も成長したのさ。
 レベル70を超えるころには、俺はもうそんなガキな夢は卒業して、ヴァナ=ディールの普通さにも慣れていた。俺は大した感慨もなくレベル75になり、そいつと出会った…。

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