涼宮ハルヒの内藤列伝 (28)

 長門は噛みつき終わると朝比奈さんから離れ、何事もなかったかのように無表情で元の位置へ戻り、再び本を読み始めた。一方、朝比奈さんは小さく震えて泣いていらっしゃる。そりゃそうだ、戦闘中に突然味方に襲いかかられたんだ。しかも薄暗い洞窟内で、襲いかかってきた相手は全身黒ずくめの能面死神少女だ。年端の行かない子供ならば失禁レベルの恐怖だろう。これが朝比奈さんにとってのトラウマにならないことを願いたい。それにしても朝比奈さんに突然襲いかかるなんて、長門は一体何のつもりなんだ?朝比奈さんに何か恨みでもあるのだろうか?
 そういえば何か忘れているような気がした。そうだ、狩人オークはどこに行ったんだ?あたりを見回してみると、そこには先ほど倒れたままの狩人オーク。それはそのまま動かなかった。そして、朝比奈さんが顔を埋めていた地面には焦げたような痕跡、そこから立ちのぼる一筋の白い煙。念のためにログを確認してみても何も無い。何が起こったのかよく解らないが、とりあえずオークは撃破済みだったようだ。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (27)

 焼けた石を水につけたときのような「ジュッ」という音。同時に糸が切れたあやつり人形のように倒れる狩人オーク。一体何が起こったのか?と状況を頭で理解するよりも前にそれは起こった。今度は俺の後ろから何か黒い物体が飛んでくる。その黒い物体は俺の横をすり抜けると、朝比奈さんめがけてふわりと宙を舞う。空中を浮いたまま伸ばした左腕が朝比奈さんの顔面をキャッチすると、朝比奈さんを支点にくるりとこちら側に向きを変え、その勢いのまま朝比奈さんの後頭部を押さえて顔面から彼女を押し倒す。
 「長門有希が朝比奈みくるにローリングフェイスクラッシュをぶちかました」という事実を俺が認識したのは、それからたっぷり10秒ほど経過した後だった。
 長門は朝比奈さんの後頭部を押さえつけながら、赤魔道士のファストキャストもビックリするようなスピードで何やら呪文のようなものを唱えている。一方、朝比奈さんは顔面を地面に埋めながらジタバタともがいている。
「ちょっとちょっと、いきなりどうしちゃったの、有希?」
ハルヒの抗議の声を無視し、朝比奈さんの腕に噛みつく長門。やっと状況を理解し、俺は慌てて朝比奈さんにケアルをかける。朝比奈さんのご尊顔に傷が残ったらどうするんだ、早く離れろ長門。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (26)

「ミ…ミクルビーム」
健気にもハルヒに言われたとおりにする朝比奈さん。そんなアホの言うことなんかいちいち聞かなくてもいいんですよ?
「声が小さい!」
「み…み…ミクルビーーム!」
「腹から声を出せ!」
真っ赤になってヤケクソ気味に絶叫する朝比奈さん。放っておくと、いつまでもくだらんコントみたいなやりとりを延々と続けそうなので、そろそろハルヒを止めるとしよう。なんてことを考えていたまさにその時、

「・sh ミクルビーームっ!!」
みくるはミクルビームの構え
みくるはミクルビームを実行!
→狩人オークに15498のダメージ!
みくるは狩人オークを倒した。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (25)

♪  悪いことが起きたら守りましょう Just aSpectacle!
   穏やかなる世界のため 割とやってます    ♪


「いいこと思いついたわ!!」
狩人オークと戦っているときに、突然叫ぶハルヒ。何だかとてもとても嫌な予感がする。
「みくるちゃん、狩人オークの遠隔攻撃に対抗して目からビームを出しなさい!」
「ふえっ!?」
何を言われているかよく理解できず、大きな目をくりくりさせてハルヒを見る朝比奈さん。
「だからビームよビーム。マジックポットが出すような光学兵器」
今度はどんな電波を受信したというのか、また訳の分からない言い出すハルヒ。
「で、できません!」
「できないじゃなくて"やる"のよ!ナシュモのキキルンだって目から怪光線出すヤツがいるのよ。みくるちゃんにできないわけないじゃない!」
「無理です!」
ナシュモにそんなキキルンが本当にいるのかはよく知らないが、一般冒険者が目からビームなんて出せるわけなかろう。…いや、青魔道士あたりだったらそういう青魔法が使えそうなのか?
「本当は、左目を青くしてミラクルミクルアイからビームを発射!っていう設定を考えたんだけど、ここじゃ準備ができないから仕方ないわ。そのままでいいから出しなさい」
「だ、出せません!」
「いいから気合いで出せ!何事も努力と根性よ、みくるちゃん!」
戦闘中なのに一体何やってんだコイツは?そんなバカげたやりとりはまだまだ続く。
「左手をこうやって目の横に当てて、ミクルビーム!って言いなさい」
ハルヒは左手を、フレミング左手の法則のような形にして目の横に置く。どうやら発射時のポーズをしてみせているらしい。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (24)

♪  そしてやがて未来さえも意味を 失うべきなら
   君は安堵するでしょうか 心配なのです   ♪


 モンクオークを撃破して、その後も順調…とは言わないまでも、オークを狩り続ける俺達。
 ハルヒはリキャスト毎に暗黒とラスリゾを使っては大幅にHPを減らし、その度に俺が【かばう】でハルヒをかばっている。古泉、お前もたまにはハルヒをかばえ。
「涼宮さんは、あなたにかばってもらえることをとても楽しんでいます。どうやらあなたにしかできない仕事のようです。僕には荷が重すぎます」
ニヤニヤ度2割増しでシレっと言う古泉。おいおい、そりゃないぜ。怪しげサワヤカソングを歌っているだけなんて、お前のヴァラーアーマーのセットが泣いているぞ。
 朝比奈さんは何をやるにも一生懸命なのだが、正直あまり役に立っているとは言い難い。まあ、そのお姿だけでも癒されるので良しとしよう。
 長門は相変わらず黙々と本を読んでいる。一応ついては来ているが、朝比奈さん以上に役に立ってない。っていうか何もしていない。こいつ、何しに来たんだ?

 モンクオークを倒した後も、俺達は修道窟でオークどもをしばいていった。少々普通じゃないパーティメンバーでも何とか戦闘不能者を出さずに済んだのは、相手が格下だからということと運良くリンクしないで1体ずつ戦えたからということだろう。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (23)

オートリフレシュと古泉の歌の効果があるとはいえ、さすがに俺のMPも底をついた。
「俺のMPも限界です。朝比奈さんもMP余っているならお願いします」
直後、まばゆい光に包まれるモンクオーク。ホーリーやらバニシュやらを連射する朝比奈さん。しかもカスダメージばかりだ。モーグリがイベントで配布している花火並にショボイ。この人のことだ、きっと神聖魔法スキルも新米冒険者並に違いない。俺はちゃんとケアルを頼めば良かったと後悔した。

 仕方がない。俺は【かばう】を発動して、ハルヒとオークの間に割って入る。本当のところはハルヒではなく朝比奈さんみたいな人をかばいたいのだが、この場は四の五の言っていられない。
「ハルヒ、いいからその暗黒さっさと切れ!」
「ちょっと、何エラそうにリーダーに指図してるのよっ!」
何を言ってんだとも思うところだが、キラキラした目とカザムの日差しのような笑顔で楽しそうに言われると、なぜか俺は怒る気にもなれなかった。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (22)

♪  「w」は癖のような感じですよ That's Problem everyday!
   できる限りのお手伝い してもいいでしょう?    ♪


「こ、こ、ここはあたしが…!悪い獣人の<t>さん、あなたのおもりじょうりにはさまさせせん!!」
 予め用意していたような、なのに何故かろれつが回っていないセリフを叫ぶ朝比奈さん。その場の全員、オークすら停止して朝比奈さんに注目する。…しかし何も起こらない。一瞬だけ時間停止したような間があいた後、朝比奈さんは顔を赤くしながら言った。
「ごめんなさい、サポ戦じゃなくてサポ黒でした~」
数秒経ってやっと、『ああ、この人は挑発しようとしたんだな』というのを理解した。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (21)

♪  誰もゲームと知りながら 毎日過ごすのは
   それぞれの思惑と ちょっぴりの好奇心   ♪


「古泉も歌ってばかりいないでタゲとってくれ。このままじゃ涼宮が危ない」
「さて…昔はマズルカでタゲ取りができたのですが…、今は修正されてしまいました」
何故か鎧を脱ぎ捨てて、上半身裸で微笑みながら剣を振っている古泉。何で脱いでいるんだコイツは?だが俺は野郎の裸になんて興味は無い。全力で見なかった事にして話を続ける。
「昔はそんなこともできたなんて知らん。普通に適当なアビを使えばいいだろ」
「なるほど…了解しました」
古泉はニヤケハンサムスマイルと共に、センチネルとランパートを発動。さらにフラッシュを唱える。こいつがフラッシュするときに、白い歯が光ってるような気がするのは気のせいか?
 普通ならこれでタゲが移るはずなのだが、それでもまだモンクオークはハルヒとの撃ち合いに熱心だ。…って、よく見たらハルヒもセンチネルやらランパートやらフラッシュに加え、スタンまで放ってやがる。そんなに目立ちたいのか?おい。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (20)

♪  どこまで納得できますか?
   不具合とメンテは続く   ♪


 なんだかんだ言いつつ竜騎士オークを撃破した俺達。まあ、味方が多少変な挙動をしようと、所詮は格下の敵だ。1体相手ならばそれほど苦戦するというほどでもない。早速次のオークに殴りかかるハルヒ。どうやら次はモンクタイプのオークのようだ。

ハルヒの暗黒!
ハルヒのラストリゾート!
「超必殺奥義、クセレントムーン!!みゃっほい、みゃっほい!!」

 ハルヒのクレセントムーンにより、ゴッソリと減っていくモンクオークのHP…と、ハルヒのHP。サポ暗黒かよ。さらに攻撃の度にハルヒのHPは減り続ける。おーい、WS撃った後くらい暗黒切れよ。
「えぇっ!?何か言った!?」
聞こえてない。いや、やっぱりこいつ聞こえてない振りしてるんじゃないのか?何故か手数が多い両手剣で攻撃する度にハルヒのHPは減っていき、加えてモンクオークのカウンターなんかも食らっている。さすがにこれはまずい。ケアルを連射する俺のMPも無くなってきた。挑発してもこっちを向かず、タゲはハルヒに張り付いたままだ。ん?そういえば長門はどうした?さっきから姿が見あたらない。そう思い後ろを見てみると、長門は少し離れたところで相変わらず無表情でバニシュの本を読んでいた。まるで、数年前からそこに置いてある彫像のようにちょこんと座って。
「長門、お前も本ばかり読んでいないで戦闘に参加して挑発のひとつでもしてくれ」
長門は本から顔を上げることもなく、聞き逃してしまうほどの小さな声で一言。
「無理。サポシ」
お前はサポシかよ。っていうか、戦闘をガン無視して本を読み続けることとサポシは関係無い。せめて戦闘に参加するくらいはしてくれ。

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涼宮ハルヒの内藤列伝 (19)

♪ 悪いことにはならないでしょう Jast a Spectacle!
   穏やかなる世界よりは お似合いですよね   ♪


 ハルヒは楽しそうにブンブンと両手剣を振り回している。両手剣のはずなのに、何故か短剣並の攻撃間隔なのは何でだろうね。もしかしてメルクリウスシリーズを代表とする「複数回攻撃武器」ってやつなのだろうか?
「伝説の突き技!パワースラッシュ!みゃっほい!!」
謎のかけ声と共にWSを繰り出すハルヒ。何だその「みゃっほい」ってのは。普通は「ヒャッホイ」じゃないのか?
「そんなそこら辺に転がっている普通の脳筋的なことを、このあたしが言うわけ無いじゃない」
「そうかい。俺には【ヒャッホイ】も【みゃっほい】も変わらないような気がするのだが」
「あたしが前に赤のレベル上げしていたときなんだけどね、リフレシュの『MP』ってアイコンと、リジェネの『HP』ってアイコン、アレって『M』と『H』見分けが付きにくいのよ。アンタもそう思わない?」
「知らん。気にしたこともない」
「だからね、肉体的脳筋的な頭文字Hの『ヒャッホイ』に比べて、頭文字がMの『みゃっほい』は精神的頭脳的に崇高な『ヒャッホイ』なのよ!わかった?」
「全然わからん」
なんだか会話自体が噛み合ってない気もするが、とりあえず『ヒャッホイ』も『みゃっほい』も大差無いということがよく解った。

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